これでわかった!内閣法制局
法の番人か?権力の侍女か?
西川伸一・著 2013年、五月書房、166頁 安倍首相は内閣法制局長官の首をすげかえ、集団的自衛権行使を可能にしようと目論んでいる。つまり首相は内閣法制局の役割を理解していないのだ。本書は安倍人事がなぜ問題なのかを解説することからはじまり、内閣法制局とはいかなる役所かを明らかにする。 |
書評11-2:評者・髙山裕二『明治大学広報』第663号(2014.1.1)「本棚」欄
http://www.meiji.ac.jp/koho/meidaikouhou/20140101/r_book1.html
書評11-1:『北方ジャーナル』2013年12月号「BOOK」欄、37頁
目次
はじめに
安倍首相の異例の人事で大忙し/内閣法制局という由緒ある役所/本書の構成とねらい
第1章 安倍人事のなにが問題なのか
(1)内閣法制局長官というポスト
内閣法制局長官は特別職の国家公務員/第一部長→次長→長官という不動の昇進コース/勉強を重ねて長官になる/閣議に出るただ一人の非認証官/記念撮影の「怪」
(2)内閣法制局参事官になれるのはだれか
内閣法制局参事官とは/「目星を付けるんです」/総務主幹が幹部への登竜門
(3)安倍人事はやはりおかしい
「政治主導」と慣例破りでうまくいくのか/「特オチ」の脅し/保守政治家は憂える/「法制局というのは黒子なんです」/「内閣全体として」を繰り返した小松新長官
第2章 集団的自衛権の行使はなぜ認められないのか
(1)自衛隊は「憲法の禁じている『戦力』」か
警察予備隊は「戦力」にあらず/保安隊は「戦力」にあらず/自衛隊は「戦力」にあらず/「自衛のための必要最小限度の実力」は「憲法の禁じている『戦力』」を下回る
(2)若き日の安倍議員が挑んだ論戦
自衛権発動の範囲/集団的自衛権行使は「ゼロでございます」/「保有と行使の分離」は矛盾なのか/集団的自衛権の典型的・中核概念は実力行使
(3)集団的自衛権行使は安倍首相の宿願
「必要最小限度」であれば集団的自衛権の行使は許されるのか/「外的概念」としての集団的自衛権行使の余地はあるか/相変わらず数量的概念としてとらえる安倍首相/「個別的自衛権で対応できる」/安倍首相にみなぎる「双務性」願望/国是変更への覚悟は国民にあるのか
第3章 内閣法制局の現場をみる
当時も安倍首相/法案審査の現場をみる/参事官は半個室で執務
第4章 法治国家の戸口に立つ双面神(ヤヌス)
(1)「法の番人」としての顔
審査事務と意見事務/内閣提出法案が閣議決定されるまで/接続詞の使い方にもルールがある/「、」をつけるかつけないか/本審査における「職権修正」/「他の人を手伝うなんてことは絶対にない」/読会の進め方/法案審査のスケジュール/参事官にとっての最難関は部長説明
(2)「政府の法律顧問」としての顔
昭和天皇の和歌引用は天皇の政治利用か/流鏑馬見物だけOK/「政府が決断をしてやってしまえば、何とでもしてやる」/クアラルンプール事件とダッカ事件/「超実定法的措置」という造語
第5章 政治的圧力と双面神の苦悩
(1)「髪の毛一本のスキを探せ」
権力の侍女になりきれない内閣法制局の苦悩/「その他政令で定める者」で対処/避難民は「およそかけ離れたもの」ではない/「法律的に読めないことはない」ということでやった/解釈をめぐる歴代長官たち
の発言/「政治の怠慢」の犠牲者
(2)解釈が変わった初夏の夕べ
「最も重要なのは論理性」/「文民」でないのはどういう人びとか/「自衛官は文民に当たる」/自衛官のまま大臣になれるのか/「自衛官は文民にあらず」へ解釈を変更/佐藤首相が解釈変更を確認/時間軸を考慮に入れた柔軟性を
むすびにかえて
批判を脇に置いて支持します。/ほんの少しの勇気と想像力を
あとがき
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