立法の中枢
知られざる官庁・内閣法制局
2000年、五月書房、242頁 立法の中枢 |
目次
第1部 内閣法制局ー知られざる立法の中枢
第1章 地味な役所の重い存在
第2章 内閣法制局と憲法九条
第3章 内閣法制局のしくみ
第4章 内閣法制局の仕事
第5章 内閣法制局のカルチャー
第2部 法律を市民の手にー議員立法と議員法制局
第6章 議員立法入門
第7章 議員法制局とはいかなる役所か
第8章 議員法制局と法律づくり
むすびにかえて
あとがき
参照・引用文献
書評 #1-1:評者・真渕勝『朝日新聞』2000年4月2日書評欄
書評 #1-2:『週刊金曜日』2000年4月14日号「きんようぶんか」-「自薦」欄
書評 #1-3:評者・井田正道『QUEST』NO.7(2000年5月)76-77頁
「立法過程の実態を解明」.pdf
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書評 #1-4:深津真澄「官僚国家の司令塔を解明する」『カオスとロゴス』第17号
(2000年6月)」
官僚国家日本の司令塔を解明する
深津真澄 *『カオスとロゴス』第17号(2 0 0 0 年6月)掲載
日本の政治の特徴は、権力の所在がまことにつかみにくいことである。「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」という憲法第四十一条の規定を鵜呑みにすれば、二院制の国会で優越的地位を占める衆議院の代表者の議長ポストが権力の所在を示すランプということになるが、多数党の都合で議長の首などすぐに飛んでしまう。それは、権力のありかが全く別であることを物語るといってよいだろう。
では、多数党の代表者が権力者といえるのか。1955 年以来ほぼ一貫して第一党の座を占めてきた自民党総裁のいすこそ、権力の所在を示すランプと理解されてきたが、実は、自民党総裁はひ弱な権力者である。誰が総裁のいすに座るかは派閥の合縦連衡によって決定され、首尾よく権力の座を射止めたとしても、常に反対派の牽制と妨害によって揺さぶられる。総裁の権力基盤はもろい。内閣総理大臣として行政権を一手に収めているようにみえても、政府機関は22 もの省庁に分かれ、内閣の統合機能は弱い。
権力者としての首相の存在の軽さを見せつける恰好のエピソードが、最近、永田町で起きた。小渕恵三前首相が突然脳梗塞で倒れたあと、22時間もその事実は秘匿されたあげく首相の意思も不透明なまま、官房長官の首相臨時代理就任―内閣総辞職―後継首相の選出という、権力者交代の手続きが進行したことである。外国の新聞は権力の真空状態が長時間続いたことに呆れたが、国会議員の大多数も大方の国民も危機管理のずさんさを批判されてもピンと来ないのが実態である。宮沢蔵相が「いや、心配ないんですよ。日本という国はこういうときでもちゃんと動くようにできている」とコメントしたように、首相という名目的な権力が損なわれても官僚機構による国家統治のメカニズムがしっかり作動しているのが実態だろう。とすれば、真の権力は官僚機構のどこかに宿っているのである。
この問いに正面から答えてくれるのが、西川伸一氏(明治大学政経学部講師)の『知られざる官庁・内閣法制局』(五月書房)である。日本を動かす官僚機構の「指令党」の組織とパワーの実態を解明したはじめての本格的研究成果といえるが、読者の中には98 年10 月発行の本誌12 号巻頭に掲載された「内閣法制局とはいかなる官庁か」という論文を記憶している人もいるだろう。その筆者が研究成果を一般市民向けにまとめた本である。 全文はこちら